1886ゴッホ「靴」
結局は靴なんだ
そしてこの足では一体どこまで行けるのだらう
ゴドーを待つのならあの木の下なんだ
日陰はない
約束したわけではない
そんなに靴を脱いで見せるなよ
全体的にくたびれているね
それにしてもやせ細った脚だ
まるで必要とされていない
それに自分が舞台の上にゐることを理解してないのではないか
手厳しく・・・
だるさや、無駄なことはいけない
やたらにそこいらを歩き回らないことだ
ほら、いくらか日が照ってきた
希望だね
希望を持たせるね
だからかうして見知らぬ人に
いま、両手を出す
コインを出す
私の両手の上に載せる
目をぱちくりさせて
やがて夕日が沈むのを待つ
あちらへ行って仕舞われましたね
あちらは街の入り口です
コインを裏にして、また表にして
あんまりに閑なものだから
木の下で
靴を脱いだり履いたりして
出掛けようか、出掛けまいか
あの人は来るのかな
行って仕舞った人に聞けばよかったのに
もうここいら辺りは日が暮れてきて
どうやら両手の間はぼんやりとうす暗くなる
裸の足は冷たいのです
そのうえ石に触れるとどうやら運命まで感じてしまふ
慌てふためく
裸電球が電柱に点いて
所在投げに
全体としてぼんやりとして
人かもしれぬ気配がして
あちらから、どことも決められぬあっちの方から
いやあっちの方かも知れない
ウラジミールとエストラゴンは急いで地に這いつくばった
犬のやうに───
繋いでください
まるで犬のやうに
ほらあそこに青白い月まで出てゐる
倉石智證
