カーテンを閉めに
そしてお家に灯がともるころ
やっとお家はおおきく息をしてお休みに就こうとする
ばーさんは廊下伝いに
けふはもうカーテンを閉めに行く
つー、つー、と音高く
自慢げにカーテンを引いてゆく
まるで瞼をとじるやうに
それでお家が静まるのだ
安心しなさい
それで後は夕食の時間になり
一日のことを感謝してばーさんは食卓に両手を合はせる
カーテンを閉めに
それは生きている時はじー様がしていたことだ
生きているじー様のお腰をつらまへて
ばー様はよくじー様の後ろに従いて
おいちにおいちにと廊下伝いにリハビリをしたもんだ
じー様も実はカーテンを引くのが得意で
決まって夕刻近くになると自分でカーテンを引きに行く
妻に褒められると
それはそれはとってもうれしさうにそれを老人くさく含羞はにかむ
生きていたじー様はもう死んでしまったので
いつの間にかもうばー様が
そんなカーテンを引くやうになった
今のところついぞ誰も褒めることはしないが
それでもカーテンを廊下伝いに全部引かれると
古びた家は安堵したやうに瞼を閉じ
やがて部屋に灯りが灯されると
いつものやうに賢慮なわたしたちの夕食となる
倉石智證