遠慮がちに

と両手を膝の上に置いた

七分目のつもりが腹いっぱい喰ってしまふ

そんなことだからと自分に云い聞かせたが

涙がぽたぽた膝の上に落ちた

やがて戦争には負けたんだと報せが届いた

 

時に緑の野砲を頭蓋の凹地に引っ張り上げる

海馬に沿って頼りなく細々と径を歩いて行った

そんなことぢゃダメでしょうと叱責された

或いはそんなことだからダメなんだと

顔を間近にダメ押しされた

唾が顔に飛んでくる

錆びた野砲を撫でさする

知らない風が頬に触れる

あゝ、いったいぜんたい

この生温かさはいつまで続くんだい

 

つくづくと

考えの善き、

言葉の善き、

行いの善き、

ことをと呪文のやうに云はれた続けた

それで少し悲しい顔をする

そんなものは直ちに商品にならんだらうが

 

メコンの赤茶けて濁った河を渡ってゆくとき

不意に風で帽子が吹き飛ばされた

みるみる帽子が水の中に沈んでゆくのを見つめて

時に緑の野砲を頭蓋の凹地に引っ張り上げる

声を張り上げる

こんなことはみんな空想にすぎないことを

あなたは知ってゐるだらうが

わたしは海馬の上にゐる

こちらは鬱陶しいほどに暑いが

むろん向こうは極寒であることなんか

わたくしもたぶん知ってゐるつもりだ

 

倉石智證