/のっと出る富士の高嶺や梅が花
/碧い海今帰仁城なきじんじょうは紅桜
沖縄の碧い海。北山王朝の今帰仁城には紅桜が今は盛りと。
/立春の近きや空の光り増す
/武蔵野に春や乗せ来る低気圧
/シューベルトです、鱒の背に光り
/八つ颪トタンを捲めくる厭な音
/ひもすがら声を枯らして八つ颪
/シソの実の入れ歯につらき饂飩かな
昼食の饂飩の副菜に自家製シソの実漬け大根細切り。ば様は。
/引っこ抜く原初の無垢か野良坊菜
/霜ねりの菜摘まます子は婆なれや
/ばーさんの少し静かに叱られて外出禁止針仕事する
/甲斐盆地機影に寒むき雲を曳き
/薄紙の蠟梅春の日の含意
/灯ろうの傍へに石蕗つわや冬の花
/風流や枯れてなほ咲く石蕗の花
ツワブキの花は・・・。
/枯露柿にお湯割りと云ふ甘露かな
/電灯の紐に寄り来る寒むさかな
/電灯の紐にたかれる冬の虫
/ばーさんの明日は何かわからないこころ躰がゆるくこはれる
「そんなことをするのは暑い盛りにだよ」
「いまは何月 ? 」
「八月だよ」
「今は寒くはないの」
「あったかいよ」。
風呂上がりに妻は足裏にクリームを塗る。
それを見ていたば様はなにを勘違いしたしたのだらう。
季節がうすぼんやりになってきたのか。
新しいステージに踏み惑いつつあるのか。
夜中の12時になって、僕の階下に来て、
うす暗き中、妻を呼ぶ声をたてる。
倉石智證


