1924,6,3没フランツ・カフカ(40歳)1883,7,3生まれ

「城」「審判」「変身」・・・膨大な書簡集、「ミレナへの手紙」。

 

ミレイやミレナへの手紙だなんて

どこにある

まさか落としたなんて云ふまい

恋することは悪いことではないが

いつまでも裸足じゃあ済まない

 

階下ではいつも妻が一生懸命料理を作っている

最中に妻は夢を見る

私も夢を見る

鍋に湯がぐらぐらと沸いて

骨付き肉が鍋に踊ってゐる

あれほど口酸っぱく云ったものを

きみもきみもきみもきみも

もう忘れている

 

星を数えやうと梁の上にあがる

星を数えるのは

まさか梁の上を歩いてゆくほどには難しくはないんだ

どんなにあがいても、ただ感じればいい

いつのまにか、ほら

女の子は星を嚥み込んで

赤ん坊はみるみるおなかに大きくなった

 

ミレナへの手紙だなんて嘘に決まってゐる

カフカは昆虫のやうな眼をしてミレナのことを見つめた

 

倉石智證