生れた

何かあったかいもんが生れた

牛が糞をする

荷車を牽きながら轅ながへのうしろにぼとぼと落とす

寒い日に湯気を立てる

躰の深奥から尻辺に運ばれてきたものが

今、湯気を立てて道に落ちる

肛門が呼気するやうに押し開く

平気なもんだ

道は寒さに渇いていた

荷車の蹄鉄が砂利を噛んでいやな音を立てる

 

零れた、

真っ赤な血が零れた

アンゴラの兎は紅い火照るやうな仔を産んで

小屋の隅の白い和毛にこげの部屋に隠す

赤い眸をして凝っとうずくまる

鼻孔をひこひこさせてこちらに催促する

飯前に兎の餌を摘んで来いと

春先の冷たい野辺に籠を持って放り出された

いやだいやだと

青い草は乏しく

すぐに鎌で指を切った

赤い血が零れた

白い骨が浮いて見える

ワッと涙があふれ出た

声は人気無き野面を伝い

アンゴラの小屋の軒下まできっと届いただらうか

 

愛愛かながな

そして産まれた

山羊の仔が生まれた

温かい羊水が溢れ、

薄白い羊膜と一緒に赤ん坊が小屋の床に落ちた

母山羊が濡れた赤ん坊を舐め

子山羊はよろよろと立ち上がる

真新しい藁しべの上だ

手に汗を握り

ガンバレ

生まれた

そして産まれたものは血のやうに温かく

糞のやうに穏やかで

涙ぐむ

 

いつしかその周りには

見知った虹色のフンコロガシが

ゐたやうな気がするが

アンゴラの仔がむくむくと育ち

山羊の仔がわたしの太もも辺りに

生えそろいもしない頭をこすりつけてくるのは

もうすぐのことだった。

生まれた。

 

倉石智證