妻子とともに在る

それは与えられた最上のものではないか

子供を抱き上げる

それを幸福と云ふのではないか

むずかる

まるで木の芽が固い表皮を打ち破って顔をのぞかせるかのやうに

とても時間をかけて

そして或る時は一気に

笑いが輝かしく弾けるのだ

 

今、彼ないしは彼女は

母親の腕にぶら下がるとても小さくてやはらかい塊で

うじょむもじょむしてゐる

それはとても本能に基づいた

とてもいいやり方だと思ふ。

1938クレー「英雄的な運弓」

 

八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 

八重垣作る その八重垣を───

雲が湧き出るという名の出雲の国に、

八重垣を巡らすように、

そのやうにして大切にして子を生し、

子供は育ち、またいずれ子を生し、

子を生し、生し続けてずっと今にしてきた。

有象無象うぞうむぞうが無数に入り組んで根を張り、冒し、

それらを思ふと、泣いた。

それはもうとくべつな涙ではないか

 

椅子を出して来て座る。

僕はそのままもう椅子の形象カタチになるかも知れない。

決めてしまへば

ただとほくの空を眺め続けるだけだ。

 

倉石智證

出雲と云ふ国の名前の通りに、いつも空に雲が立ちのぼる。

妻を籠らすために、俺は宮殿に何重もの垣を作ったけど、

ちょうどその八重垣を巡らしたようになあ。(素盞鳴)

妻問いと、妻籠みのいにしへの時代のスサノオノミコトは。

 

因みに小泉八雲の名前は、

八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 

八重垣作る その八重垣を───

からとって付けたとの話である。