あんたがたどこさ
って、ずっと探していたんだよ
むかしミレーが落穂ひろいを描いていたころ
ぼくらは決して生まれてもゐなかったから
あんたがたどこさって
いまぢゃ夫婦して李畑に雑草を刈り回し
秋の日の日和のいい時に
刈り回し刈り回ししてゐる
ミレーにしてみればとんでも考えも及ばないことだ
マシーンに乗ってせっせっせと
縦横無尽に畑中を行き来する
春先には羽化登仙と
あんなにも真っ白に花盛りだった畑も
センダン草やイノコヅチや
わけのわからないやっかいな雑草が我が物顔にしてゐる
ミレーの落穂ひろいの頃は
若い夫婦たちの倖せは土塊だらけの畑中にあったりして
しかし今では老夫婦のふたりには
李畑と云へども難儀この上もない
亭主はマシーンに跨ってせっせっせと縦横し
妻は後追いかけるやうに畑中に熊手をかける
ミレーのころには考えられないことだったけれど
でもいややはりいまでもお百姓の夫婦の倖せは
畑中にこそあるのであって
ちょっとごめんなさいよって枝下をうまく避よけて
あんたがたどこさって
そこんところをせっせっせ
結局は手が回らないので、李の木は伐り倒される。
倉石智證


