在りし日の詩を聞かむとて
在りし日の詩ことはそれ文箱のなかに
縁先の先にけふも小春に蹲る
在りし日のこととて
ほれそれはすぐのそこに
文箱から大好きな歌事うたごとの
それらを宝物のやうに縁先にひらげる
静寂が今以上に降って来て
下りて来たものはば様をやさしく取り囲むのだ
在りし日の歌事は悉く詩うたへよ
伝えてよ閑しづの調べを
こよなう低く幽かに
老の指先にやさしく便りして
落ちくぼんだ眼がそれらを追ふのだ
喜びと悲哀がこもごもに硝子障子のこちらに
まるで時の埃のやうに光彩に浮き沈みして
静のオダマキくりかへす
秋の小春が縁先のずっとこちらにあって
そこがば様の大好きな場所となる
撮られてゐるのも知らず
はい、こっち向いてね !
倉石智證
静御前は義経の子を身ごもってゐる。
(鶴岡八幡宮舞台、頼朝、政子の面前で)
「吉野山 峰の白雪 踏み分けて
入りにし人の あとぞ 恋しき」
と、静御前は義経恋唄を唄い上げ、続けて
「しず(賊・身分の低い者の服布)やしず
しずのおだまき 繰り返し
むかしを今に なすよしもがな」
と舞ったのです。




