この旺盛のまへにわれも雛罌粟なれも雛罌粟と云ふわけにも
いくまい畏れ多いことだ踏み入ることもためらわれ権勢はいよ
いよ盛んに頂点へあれあんなところにアンリルソーの蝶々が訪
ふ投げ出された梯子め緑濃く立ち込める藪の中に付け狙うもの
わたしを凝視する眼がある幾百もの敵意が笑いをかみ殺してゐ
るのだ甚だしく傷付いたたとへ葉脈が切られ維管束が鋭利に断
ち切られたとしても涙のやうに汁を流す取り囲みあなたを狼狽さ
せるくらいなこなどはなはだたやすいことだついでのことだがは
たとハナから負け戦だったと認めないわけにはいかないそれで
ほら藪の旺盛な向かうから吶喊と幾千万の輩がぼくらを目指し
て押し迫って来る地の中にしっとりと絡み合う根茎たちそして地
の上では強大なおまへたちの意思は揺るぎのないものになって
それらをおまへたちはもはや隠そうともしない気が付けば緑生い
茂れる葉末の下でけふもコロボックルが人知れず躁いでゐる。
倉石智證

