/垂乳根のばばになりしを草引きぬ
/鵯ひよどりのはや南天に来て鳴きぬ
/被災地の近くシシャモの上り来ぬ
/さみしさは天に濡れ来る秋の雨
/目纏めまといに秋の夜長のまとまらず
/掘り抜きの水に冷へ来る水仕事
/一雨にアントシアニンにじみ出て
/糠床もお休みになる朝の冷え
/生姜引く虹の色さへ携えて
/一対の夫婦でありし秋の蝶
/抜きんでる韮の花さへ蝶の庭
/お彼岸を待てず曼珠沙華咲きぬ
/秋晴れやばんばお漏らし間に合はず
/放られて夏草の今秋草に
/そろそろと南瓜は畑に実仕舞ひぬ
/ホチキスで雲と空とを秋の空
/お気に入りの椅子に座れば秋深む
/義兄さんのいざ出陣と除草機に跨りゆきてすぐ帰り来ぬ
/孫玄孫やしゃご台風のごとやって来て帰りてみればばばは寝床に
/お茶の間に「時間ですよ」と在りし日に出れないままにはいさやうなら
(9/15死去75歳)
/掛け合いにピップと云へばエレキバンよき時代かな右肩上がり
(1979~84お茶の間TVのCMで)
/禿頭の詩人躰を丸木舟魂ゆらゆらと海の彼方に
肉体は丸木舟、どうせ魂は残るんだから、
体が早めに棄てられちゃってもいいんじゃないかと・・・
9/15老齢の詩人は云ってゐる。
「旅人と我が名呼ばれん初時雨」ばせう
「今日までの人生、上出来でございました。
これにて、おいとまいたします」
2018,5月「語る 人生の贈りもの」(朝日新聞)の最終回。
樹木希林さんはこう締めくくった。
確かなものへと還って行かれたのですね───。
合掌。
倉石智證


