/月見れば千々にものこそあはれなり人去りし庭に虫の鳴き出す

/三界に虫聴くことの良夜かな

/虫の音や五臓六腑に沁みわたる

/一雨の来て虫の音の生きかえる

/三千大千世界鳴くや一寸の虫

/虫の音や枕の下の良夜かな

/虫の音に小さきほのほ点しみる

/虫すだく虫の筏に乗る心地

/みなひとり水の地球や虫すだく

/飛蝗飛ぶ我に行く先告げもせで

/雲白し遊子はどこに枕かな

/廃れ家に葛の葉ほどは驚かず

/蒼穹に谷川岳をポンと置き

/夏闌たけるる杉林さんりんまさに色を濃く

/手を合わすのの神様にえへんえへん

/朴の花錯誤は今に始まれり

/リンドウの青を収めて山の径

/リンドウの涼し青の色収め

/新涼や蝶湧き出る山の径

/リンドウの花苞開くを見てゐたり

/苗場には雷清水トリカブト

/登り来て命をひろう清水かな

 

倉石智證