そんなに引っ付かないで
なんとはなしに嬉しいのだけれど
そんなに上に乗っからないで
この季節に
急に賑やかになった
それをどちらかと云ふとうれしいを云ふのではなく
どちらかと云ふとさみしいを云ふ
そんなんを隠そうとしてお茶らけているね
あなたはなにしろ立派ですから
そんなに落ち着いている
ずんと畑にゐるこの方
こんな土間に来て
忘れられたやうに抛たらかしにされてゐたのに
いきなり頭の上に乗っけられた
お話を聞いてあげるしかなくなった
わたしは南瓜でスーパーでは250円もする
そしてわたしはゴーヤでどうも自分の不格好を愧じている風だ
どうしてこんなに早く摘まれてしまったのだらう
あんたさんはわたしを頭に乗っけて
これから秋深くに入って行くのでせう
わたしはと云へば
わたしの凸凹の表皮は早や黄ばんで来て
わたしはわたしのお腹のなかに抱えてゐる種子に気を病んでゐる
あまりに日照り続きに水不足で
ほとほと今年はまいってしまった
わたしは小さく捩れてゴーヤの蔓のすだれにぶら下がる
見るに見かねてあの人がちょんと剪り採った
うれしいのやらかなしいのやら
さまざまなちょっとした来歴や宿命に
ぶるッとする
でもかうして土間の薄暗い中にゐると
幾分か気が安らいで来てなんだかほっとするね
わたしはあなたの頭の上にゐる
夜になると土間の隅でははや虫が鳴き始める
倉石智證
