燕、つばくらめ
さうさうにけふは風にもまれて
風の中に飛びあぐむ
ふわふわとふわふわと
風の通い路に翼を広げ
つばくらめに風が吹くたびに
上手に風に乗れるかな
ぼくの部屋に白いページに本がめくれ
うれしきものが届く心地する
八月も半ばになれば
雲も白く勢いを増し
高く高く、ほんたうに高く
まるで帆船のやうに青空をかける
夏休み───
魚捕りの網を持って子供たちは出掛けた
眼にきらきらする小川の流れ
そよぐ水草の下に
ほら、小魚たちが顔を出す
網に水の雫を散らし
一心に道を駆けて来る
「捕れたよー」
びっくりするくらいに耳近くに息を弾ませてゐる
草いきれ、
天心に太陽が上る
燕、つばくらめ
さうさうにけふは風にもまれて
風の中に飛びあぐむ
ふわふわとふわふわと
風の通い路に翼を広げ
つばくらめに風が吹くたびに
上手に風に乗れるかな
いや、子燕たちは
飛びあぐねているのではなく
風の波乗りに遊んでゐる
風に乗り遊んでゐるのだ
一心に魚捕りの網を手にかけて来る子供たちがゐる
故郷の夏休みに雲が天心に上がり
ぼくの部屋に、白いページに本がめくれ
草いきれと、水の香と、子供たちの歓声と
うれしきものが届く
倉石智證



