緑の館にベンチを出して休んでゐる

みるみるわたくしが緑色に染まってゆくのを待ってゐる

鳥たちの囀りが

わたしの額の上を飛び越え飛び越えしてやって来る

そして傍ら、耳を澄ますと

水の唄と云ふものがあって

それをもはや知らない

どこをどう流れているのか知らない

そのことについてわたくしは

わたくしにもっと物分かりがよく在って欲しいと思った

 

電話をもう一度かけ直してください・・・

数え切れなくなったころ

何か途方もなく約束なんかをしていたわけではありません

きっぱりと目覚める

長く前方まで続く幾何景に対して

一瞬ためらった

帰って来る時までに

ちょっとトイレに寄り道なんかするけれど

とっくんとっくん自分の心臓の上に水の唄と云ふものがあって

わたしはいま心底そのことを意識してゐる

 

安らかになるまでにずっと

マイ メトロノームは

私は息を継ぎ

そして少し休んでゐる

そうして緑の館に

陽は果てもなく煌めき葉叢を梳いて

幾重にも幾重にも

陽の水の輪の縞になって

たしかに天上から降り落ちて来る

 

 

倉石智證