ナシの礫

ならいいな

それは食べたいな

しかし

無しの礫だったら

それは食べられない

ひどくつまらない

 

義兄は屋敷の畑の梨の木のナシたちに袋懸けをした

それは黄色い袋たちで

緑の葉叢の中にまるで絵のやうに浮かびあがった

今はかうしていても

すべては世界にあるオマージュへの旅になる

人間だけが感情を持つばかりでなく

ピカソの絵のやうにあらゆるものは混淆する

マチスの絵のやうにあらゆる感情はダンスする

歓喜だ

 

蝶々が絵のやうに紙から抜け出して旅をする

それもやはりダンスだ

途方もなく空に舞い上がり

景色を飾る番となって思いがけないところに舞い降りる

紡錘形の梨の木の形に

やがて季節が過ぎれば梨の形をした三つの小品となり

あなたに届けられるに違いない

 

わがままでなければかうしてあらゆる感情の側面についての考察

ナシの袋懸けを見て

あんまりな静けさに

完成した全体としてのオブジェに

義兄は思はず静かにほほ笑むのだ

 

なんにしても無しの礫はつまらない

それは決して食べられない

あらゆるものがごちゃ混ぜになって

感情がものすごい勢いであちらから飛び込んで来る

 

倉石智證