あなたがひとつ齢を増やすと

私もひとつ齢をとるのよ

プラットホームを改札口にぬけて

そんなに走らないで

すごいカーブを描いて

 

「で、いつけえって来るんでえ」

けふはもうこれで四度目になるけれど

もう一度説明しましょうね

出掛けるけれどあと三つ寝ると帰って来るのです

なんにもでない(出来ない)ようなって

毎朝が小学生のようになった

 

すごいカーブを描いてそんなに走り出さないの

ランドセルから筆箱が飛び出るわよ

あんなところで釣りをしてゐる人がゐる

日がな釣り堀で

のんびりしていていいなあ

市ヶ谷駅では省線がすごい勢いで突っ込んで来る

緑が濠のこちらにもあちらにも生い茂って来て

あゝ、なんにでももう我慢できそうもない

 

おばあちゃんね、これで五度目になるけれど

けふは何日になるの

わたしたちは出掛けるけれどあと三つ寝ると帰って来るの

でない(出来ない)、なんにもでなくなっちゃった

毎朝起きる度に小学生みたいになっちゃって

あなたがひとつ出来ることが増えるたんびに

私は出来ないことが三つも四つも増えてゆく

 

あゝ、危ないからそんなに駆けださないの

改札口をすごい勢いで小学生が駆けてゆく

 

庭の君が代蘭が今年も。

 

倉石智證