幾千、幾万の人たちが

きっと祈ったことだらう

かうして眠りにつく前に

子供たちを眠らせて

健やかな寝息を聞く

見知らぬ夜に向かうために

麦の穂が黄金に輝く

帯のやうになって、

と真に願うだらう

 

だから、すべてが季節に未完のままだとしても

かうして私等は旅に出る

敬虔な百姓として

或いはある時は敬虔な商人として

立ち尽くす

種子はそこいらぢゅうに在って

地深くに眠りにつくもの

或いは空高くに舞って

無数の鳥たちの啄みがそれらを確かにするものもある

地衣に落ちたものたちは信じられないほどの静寂さに出会ふ

祈りはそこここに立ち上がり始めるのだ

 

子のために祈らない父親などゐるものだらうか

母親は無垢の子供たちのために膝まづく

夜に出掛けたものはそのずっと奥の遠い向かうに

麦の穂が輝けるのを見る

 

黒いカラスたちよその時はもう躁さはがないでゐてほしい

黄金色の麦の穂畑に躁げば不吉が起こる

キシキシと空を撃てよ鳩たちの群れよ

明日になれば舗石にきみたちの憩へる場所は開ける

子供たちは無心にきみたちの後を追いかけるだらう

 

倉石智證