猪瀬氏FBより蜷川有紀氏の作品。

   「人生には終わりだけでなく、どこかにいつでも始まりが用意されているのではないか」

   と猪瀬氏は。ご本は『ここから始まる』(蜷川有紀・猪瀬直樹)。

 

薔薇の木に薔薇の花咲く不思議なケレト

すべての午後に…

 

だとしても薔薇の装いを知るわけがない

いまさらながらその棘のある場所を知るわけがない

そうして出掛けてゆくのだ

なんと云ふ明るさなのだらう

ミニバラよ、ミニバラよ

と呼びかける

土壁に影を揺らし

はだらに

 

この優美を知るわけがない

この華憐をましてや

まんまと、今更ながらそれが陥穽かんせいだとしても

古い追憶を呼び覚ます

薔薇はだから古い傷を人に呼び覚ますのだ

少年は自傷する

 

それが少年や少女の日に

少しの血が出たばかりなのに驚き

やはらかい舌で掬い取ってくれる

舌に塩辛く

しかしこの後悔は甘美に切なく

疼く

なにものにも代え難く

それだからその懐かしき人らには

今やはや長いお手紙を出すしかないかとも思ふ

 

倉石智證