見知らぬ昼と
見知らぬ夜があって
祈りを捧げるからどこからどこまで行ける
と聞く
この地域は雨ばかりが降って
甘い果物はみな樹上にぶら下がる
それをわたしにもぶら下がれと云ふのか
やすやすと花の香に誘い出される
それならば知らないうちに誘惑をどっさりと背中に受けて
ドルスの歌声は昼となく夜となく
港々の艀に聞く物憂ひ調べとなって
眠るなと云って、耳元に囁き続ける
解放区に出る
見知らぬ昼と見知らぬ夜が大きく口を開く
いまは地下鉄の響きが耳障りに木魂する
夜にどうしても出掛けると云ふから
見知らぬものとなった方がいいのだ
暗号を読み解く
見知らぬ昼と
見知らぬ夜があってその境目に
どうしても出掛けると云ふから
いやだいやだと云っても最後
手を離したらそれが最期
永遠に見知らぬ土地へと連れ去られて行ってしまう
深紅の薔薇を翳かざせよ
この昼の懈怠に
ドルスの歌声は背中に遠ざかって聞く
真白な肌ゑに静かに腐食が始まる
見知らぬ夜と昼の間
眼の中を夜が彷徨さまよふ
どうしても理解しえない一人と二人になって
ファドの哀しみは薔薇の花深く、夕日の色になって
確かに沈んでゆく
倉石智證
ドゥルス・ポンテス(Dulce Pontes, 1969年4月8日-)は、ポルトガルの歌手。
