考えろ
とか
歩け
などと云ふのはムツカシイ
畑の畝にえんどう豆の柵が傾いて行く
成長は見る間であり
もう少したてば手の施しやうもなくなる
重さと云ふのは難儀なものだ
普段は持っていることさへ忘れているものを
或る日このヒダルサに耐えきれない
待っててね
とか
もう少し
などと云ふのも嘘っぽい
時間が眼の前にでんとあるならば
さう云ってくれれば良さそうなものを
つまり、お互いにすぐに忘れて
だから、
駆け出す前にもう一度しゃがむ
乾いた土に蟻ん子が這ってゆくのを見る人は奇跡だ
自身が虫眼鏡のやうになって
世界に入って行く
自分に入って行きさへすれば
あとはいろんな物事が空想めいて
高さは低くなり
横は斜めになり
短いは長い、はやいはとつぜんゆっくりになり
重たいは軽くなり
自分は野原に寝ているやうな気分になる
雲はいいなあ、と思はず呼びかける
蟻の目線に立てばもはや
考えろも歩けも
待っててねももう少しも
蟻のスピードに立てば
そんなことはもうどうでもいいことになって
地球は急に堅固になる
倉石智證
ある日突然、自分の体重を意識する。
躰が全体に重たくなったように感じるのだ。
ひだるい=「ひだるい」を見ると「餓るい」の文字がこれにあてられ
語源は「乾怠」(大言海)「脾隋い」(志布可起)「脾怠い」(隠語辞典)、又意味は
①空腹でひもじいこと②欲望がみたされない③身体がつかれて力が入らないとある。

