取り崩してゆくに過ぎないものに
それを愛としたならば
それはみるみる減ってゆくものとなり
無性に悲しい
ところがどうだ
失っても失っても愛はどんどん増えてくる
見ず知らずの愛は
陽だまりの翳のやうになって生れてくる
ふくらむ
だから何も心配しなくていいのだと分かる
天気予報が告げると
窗下そうかの花は
朝まだきにあれほど固く花弁を閉ざしていたものが
たちまちアッと云ふ間に花片を天に広げてゆく
なんと云ふ放恣な
他愛もなく虫たちが引き寄せられるのも
もはやあながちとも云へない
無性にその可憐さをその無垢を誇るのは
だから驚きだ
ここから先は
ただいまさらながら少しでも可哀さうだ
と思ふやうなことがもしあるとするならば
たぶんそれは倫理学の問題になるだらう
と思はれる
倉石智證


