美しい虚構として悩まされ続ける

肉体て云ふ

薔薇の花と云へども難産の末だ

その上、装ふて云ふ

まるで天鵞絨びらうどのやうな

やはらかな

人目を忍んでさへ

眼を偲ばせる

 

みんな好きだと云って近づいてゆくのです

蟻が赤みに潤んだ棘の上を越えて

今、花の元へと急いでゐる

使者なのです

まぎれもなく、みんな肉体と云ふ虚構に悩まされ続け

うんうんと顔を真っ赤にして自らを励まし続ける

ぼくはこれでいいと思ひますよ

でもあんまりに性急すぎて実は

少しも間に合はない

 

花芽が出て

すぐに花芽は花茎に伸びる

花茎にもとてもやはらかい處があって

妻にしてみれば笊はとりどりの花茎ですぐにいっぱいになって来る

そして日がなぼくらはかうした小宇宙をあたかも待ってゐて

不意に落ちて来るものを

それはけふは蝶々になった

 

薔薇の花ですが

翌日にはもう二つ目が咲いて

それからアッと云ふ間に

途切れることなく咲き続けています

 

倉石智證