山椒の葉は卵から孵ったimomu(蝶の幼虫)が大好物。

 

戀すてふ

そんな、そららよと

愛すてふ、あんなふはふはと

揚羽蝶が玄関わきにやって来る

ぼくは待ってゐたよと云ふが

妻はイヤダ今年もと

柄杓の水を投げかける

 

戀すてふ

そんなふわふわと

挨拶に来るわたしに

空の中から不意と現れて

そこはおまいさんの場所だよとわたしが云ふが

山椒の葉叢が緑をいや増す

若葉が陽の光を受けてざわめき立つ

 

おいでここへ

翅を憩やすらふところ

葉陰に卵を産み付ける

妻はイヤダ今年もと

柄杓の水は放物線を描き

蝶の母親と

ヒトの母親がせめぎ合ふ

陽の光りはおおどかに

庭一面をいっぱいにし

 

玄関のわきの山椒の木に

今年も音つれた

揚羽蝶の

ひらともいふ

ろよらよとひらがなに

それはそれでお手紙

ふはふはと

そして一気に宙の中へと消へて行った

 

すぐにimomuが生れてくるでせうか

 

倉石智證