実際はみふみふもふもふ

実際は理解に苦しむ

春は円周率に乗って3.141592653589………

ページがらあふれ出る春愁

ゴミ箱の周りはティッシュの山になる

鉛筆でなぞって行ったら紙片からはみ出て

花粉があんまりに粘膜に引っ付くもんで

すぐに√を忘れ

πのπのπ

人を助けに呼びに行った

 

あらゆるものの芽は今や円周率に乗って

だから空気中に身を乗り出して解を解こうとしたら

みなそれだけで鬱になる

√2はひとよひとよにひとみごろだなんて

実際はみふふみもふもふと

空気の膜の間に沁み出して

ところがそればかりではなく

根は繊毛となって土中に歌い始め

そんなことなら眼が覚めたミミズが知ってゐる

 

春はすべてに謀りごとを回らし

そのやうに何食わぬ顔をして

隣の奥さんに

ものを借りに行く

 

倉石智證