そっとだよ
そして探し始める
あんなにさっき云ったのにもう忘れて
離れの部屋の衾ふすまの縁へりの向かう側に
小さく背中が見えているよ
こんなに呼んでいるのに気が付きもせずに
デデッポポーが鳴いた
けふはお天気がいいからおばあちゃんはお洗濯しましょうね
一番いい考えは
朝食が済んで、晴れた日には
おばあちゃん、きっと躰を動かすのがいいのです
日当たりの中に椅子を取り出して
古いアルバムをまた手にして
日向ぼこもいいけれど
でも、かうして決めたことは順序良くがんばらなくっちゃ
おばあちゃんは未だ汚れたものを隠したりしない
まだ汚れていないと云い張るだけだ
だから自分だけのものを洗濯する
電子音が呼んでますよ
あゝだから、また最初からやり直さなくっちゃ
物干し台に出れば
李も林檎も柿の木もみんな芽吹いて来て
春の風がやはらかくば様を包む
電子音が鳴ったね
でもさうではなく
デデポポーの詩うたが聞こえてくる
顔を見合ってお話しできるときはお話しする
いつかはひょっとするとわたしの顔さへ忘れて
話の往復が出来なくなって
こはれて・・・
頬を両手に抱き寄せる
その時は鳥の歌だけが
もはや耳に木魂していたりしてね
倉石智證


