■東京マラソン。靖国通り富久交番手前坂を色とりどりに。
この道の向かうに
この道の向かうに行くかもしれない
もう歩き出してゐる
そろそろ空に
柑橘系の風が吹きわたって来る
一人は涙ぐみ
一人は笑ってゐる
信号機を渡ればすぐに駅になる
さうではなく反対の方角に
決意や意見は決まって大勢の中にあるだらうから
かうやって歩いて行く
春の芽生えは足元から
見たこともない長い昔の時間を思い出させる
舗石に添って冬樹が
プラタナスが無数の枝に芽吹きを膨らませ
だからそれは希望と云ふやうな
空に明るく
そして私その下を黙って歩いて行く
わたしの一人は涙ぐみ
わたしの一人は笑ってゐる
子供たちを送り出してゆけば
子供たちの影はどんどん道の日向に小さくなっていって
そして遠い向かうからどんどんまた大きくなって
次第にしっかりした足取りで近づいて来る
微かな懐かしい赤ん坊の時の面影をしきりに探して
そんなものをしみじみとわたしたちは上向いて見るのだ
春はスキップを踏んでやって来て
明るい笑い声共にアッと云ふ間に追い越してゆく
あの道の向かうにゆく
彼らはもう走り出してゐる
倉石智證
