■久里洋二さんのなぞなぞ、「これなんだ ? 」

 

普通はオカシイだらうもん

或る日突然皮膚からにょきにょきと芽が生えて来て

枝に花が咲き、実を付けて

太陽さんがにっこりと笑ってゐたりして

それはそれは人間だったら吃驚びっくりだらうもん

おちんちん以外のところに

遠慮も介錯もなくいきなりおちんちんのやうなものが生えてきたら

とっても安心してゐられないだらうもん

笑ってなんかゐられない

 

けふは梯子に上って林檎の木の剪定をしたもんだから

よくよく見ると幹と云はずいろんなところから

にょきにょきと枝がツン出ている

いきなり断りもなしに幹の表皮を打ち破って

無数の芽が萌え出て枝になって

春になるとハナサカジイサンニなるぞなもし

夏になるともう押し合いへし合いしてわんさか大変になるぞな

そんな大騒ぎに風が吹けば右に左に大揺れに揺れ

ダンスするやうな様は決して嫌いではないが

どうにも息苦しくなる

どうせ太陽の光の取りっこになるに決まってゐるだらうもん

 

どうだい、すっきりしただらう

ずい分ちょんちょん剪り込んだり

大きくどんどんつづめたりしたからね

ただ心配なのはこれをきみたちは痛く感じたり

致命的に打ち沈んだりすることだ

僕たちの髪の毛や爪を切りそろえるやうに

あゝ、ぼくはうっかり

それらが気持ちよかったのかどうかを聞くのを忘れたな

さうだ、むかし人間は木だった、なんて人がいたな

 

やがて巨きなクジラの背中を美しい大星雲が駆け上がっゆくだらう

だが昼と夜が過ぎて

それでも深刻な出だしにはならないはずだ

おっと、わたしは夢をみてゐる

気が付けばどうやら腋の下あたりがこそばゆい

あゝ、ほんたうにとうとう芽が出たんだ

 

倉石智證