■ウラジミール、エストラゴン、首に縄を付けられたポッツオとそれを曳くラッキー。
月影冴えて
われらは渡る
土産は一つぶらぶらさせて
仲良きことはほら証拠には
手をつなぎ合う
踊り合う
おいてけーって置いてけぼりにされる
もう決してついていけないのだ
鳥はもう空について行けない
ある日空の青さにびしゃんと張りついてしまった
魚は海流にもはや従いていけなくなりました
何億年と遡って
水流の表面にぴょんぴょん跳ねあがります
木に上り始める魚たちもゐて
何事かと焦ります
月影冴えて
われらは渡る
土産は一つぶらぶらさせて
前にも云ったことですがゴドーは来ませんよ
わたしたちはハチャメチャ仲が良くて
手と手の平を重ねて結び合い
足を同じ方向に
一、二ィ、三
一、二ィ、三
と同じやうに反対にも、はい
一、二ィ、三
一、二ィ、三と
でもほんたうはそんなに引っ付かないで
でも、あんまり遠くへも行かないでと心配に
ゴドーがついに来ないのは知ってゐましたから
口癖では彼はいつも
「足の裏が冷える」と云ひます
でもすぐに
「足の裏が火照る」とも云ひます
一体全体どっちなんでせう
人騒がせな
えー、ペプチドがどうかしましたか
魚が木に上り始めるのですよ
そしてついに空を飛んだ
そして傍にゐて証明するやうにと云われるのです
落ちると思った瞬間にものすごく寂しく感じて
落ちながらもうこれが最後かと思ふと
またひとしきりさみしくなって
それが魚の、いや鳥の最後の気持ちです
月影冴えて
われらは渡る
土産は一つぶらぶらさせて
土産ってゴドーさんなんでしょうか
ゴドーさんはでも決まって来ないですよ
ハミング…
倉石智證
1970ころ読んだ「ゴドー」をふと思い出した。
世界の不条理のこと。
真面目に考えたらニーチェのやうな発狂しかない。
松岡正剛さん曰く、
───残り滓、持ちこたえられない中心、慰めにもならない断片。
『ゴドー』にあるのはこれだけだ。
