銀嶺四壁に立つ
眼路、中央フリーウェイに新たなり
左に行けば左に
右を向けば右に
あゝ、北に遠ざかっては北岳が
北杜市にかかれば眼前に八つが大きくせり上がって来る
小淵沢手前
おゝ、ゆるぎなき甲斐駒がそそり立つ
ハンドルはライトに
追い抜く人は人まかせに
このページェントは私たちなしでは成り立たない
諏訪湖は鏡に冷えた
トンネルをぬけて岡谷、塩尻をひとっ飛びに下ると
松本盆地に常念が浮かぶ
あゝ、安曇野よ
意義深き安曇野よ
水も清く流れゆく
君たちなしではアルプスも生まれ得ない
歴史に埋もれた多くの人達を思ふ
いやしけ吉事よごとをと
ばばを姨捨PAに休ませ
雪に眩しい田ごとを望ませる
善光寺平を下れば
やがて蛇行する千曲川の先に
わが故郷の高社山が雪を被ってわたしを迎えてくれる
春夏秋冬いつも変わらずに、山よ山よ
少なくともそれら私の姻族いんぞくよ
雪に黒く蛇行する千曲川に添って車を走らせていると
一入感慨深くなるのだ
「在る」と云ふことの存在の儚さよ
だから、雪深き津南を過ぎて
十二峠を越えて
ほんたうにトンネルを抜けると
あの人ではないが
そこはまさしく雪国であった
眼前に巻機山が真っ白に飛び込んで来る
今年も
幸さきくませと
いや重しけ吉事をと
もう少しで目的地に到着する
倉石智證
