きみはそんな風に汽水を行くのか
それではまるて男と歩く錦糸町だ
微風が衣服の中に入り込み
やはらかく矛盾を否定する
愛、と云ふんだね
生まれたんだよ
今でも武蔵野を
陽もあかあかと大股で闊歩してゆく
渋谷くんだりでは
けっして
ビルの玻璃に夕照を沈めて
彼らは道玄坂の方を上って行った
映画が開館するのにはまだずい分と時間が早い
汽水をゆるゆるとして橋の上を渡って行く
男を従えて
なるほど全く馴れているもんだね
それなのに落ち武者が今一騎
箙えびらに矢数を入れて
馬上から落ちんばかりにして武蔵野を駆け抜けてゆく
切羽詰まって
愛が生まれたのだ
それをきみらはやはらかく否定する
「ホテルしよ」
と云ったのは
女の子の方からだった
倉石智證