■1959熊谷守一「鬼百合に揚羽蝶」
びっくりしたなあ、もう
こんなところにMORIKAZUがあった
地下鉄の駅の構内に大層に懸かってた
笑ってゐる、詩ってゐる
呟いてゐる、眠ってゐる
ほんたうにMORIKAZUのネコが
白と茶色のブチが躰を伸して
気持ちよささうに眠ってゐる
もひとつは蝶々がお花にたかってゐる
舞ってゐる、詩ってゐる
これがまあ貴婦人のやうに
黒い羅紗のスカートでダンス
熊谷くまがいさんがこんなところにびっくり
大勢の人たちがせわしなく往きかってゐる
あるカップルの女性の方が
「あら熊谷よ」とちょっと立ち止まる
男性の方は「知らんなあ」とそのまま行き過ぎた
何しろ大きなポスターだ
電車はまだ来ない
ぶち猫の気持ちよさそうにのしてゐる方には
かな釘文字でMORIKAZUとあった
翁はまあ地べたに這いつくばって
カマキリとか蟻ん子とか蝶々さんとか
まあほんたうに好きだったな
仙人と呼ばれてゐたんだ
「THE JOY OF LIFE」
生きるよろこび
見ればみんながすきになる
倉石智證
「展覧会」
東京国立近代美術館
2017.12/1 - 2018.3/21
