魚が考えるくらいなら

山羊も考えるくらいいいだらう

むしろ山羊の方がその縦眸たてめが可愛い

そして人間ときたら忘れる

こんにちは、と顔をお辞儀したら

顔からごそっともぬけに落ちた

わたしはあわてる

 

魚は眼を開けたまま眠ってゐるし

だから魚が泳ぎ出したら注意しなければならない

子供の画用紙ではよく描けて

子供が眠りにつくと

パステルに部屋の中に泳ぎ出す

山羊の仔は喜んでぴょんぴょんと横っ飛びに跳ねて

それでわたしの太腿のところに来ると

ぐりぐりと角の生え際を擦り付ける

もう、欲情したのかな ?

 

犬が見てゐる

わたしの顔を探そうと

部屋の中をぐるぐるまわり

とうとう自分の尻尾を咥え啼くに哭けない

莫迦だなぁって猫が笑ふ

みんなわくわくして魚も犬も猫もどうやら部屋の中にゐるみたいだ

そして山羊は部屋の外にゐて窓の下に佇む

(牧神の午後への微かな気配とか)

部屋全体を取り囲んでいるのは青空で

そして、みんながみんな

(肯定する)

まだあきらめてなんかゐない

 

倉石智證