■龍が玉を噛む───
海からもらわれて来たからでもなければ
山で拾われて来たからでもないだらう
月に踏み迷ふ
山径には大きな栃の実がいくつも落ちてゐる
獣臭がわっと広がる
海に月が生まれるとき
山にも星々が落ちるだらう
月がわはは、と笑へば
星々もくすりくすりと笑ふかも知れない
その時、誰かと誰かがきっと好きになったのだ
月にまゐらす
月にまゐらさう
海にはワタツミノカミが山には山祇やまつみの神が
ついには海月くらげが宙に浮かぶ
あなたの愛が得られたのは
まったくあなたの力の所為せいだ
虫たちが鳴き熄むのを待って
月が雲に隠れるのを待って
ようやくそのことをあなたに告げやう
ずいぶんと日月が過ぎた
月にまゐらさう
どうしてもそのことをあなたに告げたくて
倉石智證
