お急ぎの方は三番線にお乗りください

って云ふから大急ぎで飛び乗った

お盆に間に合ひたい方は三番線がいいて云ふから

慌てて飛び乗った

お盆に間に合はなかったら困るなぁ

ってどうも背中がそわそわするなと首を回したら

どうも知ってる人が背中に乗って

なんだじいさんぢゃあないか

じいさんはちゃっかりしてんなあ

まるで知らんふりして

上を向いたり横を向いたりしてゐる

それであっちへ行ってもまだちょっとわがままだ

新聞くれ、つうの

まいったね

 

どの人もどの人もみんな故郷へ向かって

三番線は満員御礼

でも僕の他の人達もみんな慣れてゐる風で

男の人達はたいてい腕組みをしてむっつりして

その代わり女の人達や子供たちは賑やかで

でも三番線の列車の中ではどう云ふ風に躁いでも

なんだか明るくしーんとしてゐる

みんな死んでからのことも馴れたもんだね

 

お盆ござれと麻がらを燃やす

門柱の袂にぽっと明るむと

なんだじいさんが胡瓜のお馬に乗って

そろそろと神妙にやって来る

ふわりふわふわと座敷に入りすっと自分の遺影に収まると

蜩がわッと鳴きだして

廻り灯籠が七色に朧に灯る

えー、三番線はどうかな

えー、三番線はどうかな

この世のこともあの世のことも

下町のあの辺りから回り灯籠に彩られて

 

倉石智證