あれほどの暑さも夕刻ともなると
次第におさまってゆき
口を開け放しに喘いでゐた鳥たちも
一息をついた
さーッと夜のとば口に地表の熱が退いて行って
夜のうちに草々はみんな朝露をため込むようだ
炎熱して過熱する畑よ
足を踏み入れるだけで顔がほてるだにするのに
とりわきてスベリヒユおまへは
この暑さの最中にさへアッと云ふ間にはびこって来る
おまへには人間に対しての遠慮と云ふものが無いのか
はうはうの体でやっと家の日陰へと入る
人間とおまへたちの境を感じるのだよ
シジュポスの神話のごとく初めから負け戦は分かっていたが
うすうすとだが包囲網は狭まってゐる
炎熱し、過熱する畑
夢の中でさへ吶喊とっかんと攻め上がって来るおまへたちの声を聞き
わたしたちはうろたえる
どうしておまたちはいつもそういう風に正しいのだ
およそ人類が始まって以来
とわたしは振り返るのだが───
草を引き抜き種を零さないやうにと石を敷き並べ
ここは私たちが暮らす内なる陣地だよと
おまへたち草族と人類との攻防が始まった
それなのにほうたらかしにしてゐたわけでもないが
ぼうぼうと繁茂する草族おまへたち
その旺盛さにおどろく
その治癒力と復元力に気圧される
けふも畑の脇道を行けば
草々が方々から攻め寄せて来る
たちまちそれは人間の境界を超えてすぐに
果樹の下枝に届くほどに背丈を伸ばし
人間を威嚇し、嗤ふ
脱出した途端みるみる包囲網は狭まり
きっとすぐに家々も溶けて崩壊し
みんなすぐにあの静寂さに戻るだらう
しかし、驚くことはない
みんなただ自然に帰りたいだけだと云ふ
つはものともが・・・
倉石智證

