わたしの櫛を使わないでって
使わないでってあれほど云ったでせう
洗濯場に逃げ込む
どんなに洗っても
どんなに擦っても
一度汚れたものはもう落とせない
わたしのパンツを穿かないでって
下着を穿かないでってあれほど云ったのにもう忘れて
お風呂場にずらかる
どんなに身ぐるみしても
どんなに剥いでも
もう生理は戻らない
赤ん坊のやうなつるんとした肌にはならんと云ふに
畑からひっそりと南瓜を持って来た
ばーさんの皺深い手がその上を掠める
裸電球も最後に消すと
四時に鼠も周りをうろつくだらう
南瓜は夢を見てゐる内にきっと甘くなる
この陋屋に、この陋屋に嫁に来て
赤いべべ着て子供を産んで
この百姓家は百年もたった
ばーさんは、あゝばーさんは
また叱られて詰られて
哭く
蜩は朝にもう
ホイチョー、ホイチョー、リュイ
と鳴き始める
首の後ろに汗を掻く
あゝ、何をしてんだってことになる
見ろ、庭一面の草だ
倉石智證
