ゲバラに行って来いって云はれたんだ

来てみると宙空に赤い球がぶら下がってゐる

rain of ruin

黒ずんだ涙のやうに

壁面や障子や私自身を煤けた雨がおびただしく汚してゆく

 

触りたい気持ちが触られたい気持ちで

あべこべが躊躇なく悔しい

私が立ってゐるところが立たれてゐたところで

それらが裏返る

受け入れがたい災厄が真っ白な光線になって劈つんざいた

 

触りたい気持ちが触られたい気持ちで

あべこべが悔しい

裏返る、世界の多くがそんなもんで成り立ってゐる

おまへはなんになるのっておまへ自身も知らない

お互いにぴっちり重なり合って

囁き交わす

そのうちに望み通りの

でも気が付くと自分でも知らない形に育ってゆく

 

制御できないものに愛の日の愛って卵型

卵型に立って

そして呼びかける

つるんとしたその剥き玉子に

わたしたちは並々ならぬ関心があって

昂ぶるは捗らない

不覚にもだからいずれいつも海へと流れ出る

 

8/6になった

何千度と云ふ原爆の永遠の涯まで行ってみたいか

気味が悪いほどの紫色に覆われて、すべてが唐突で

雲が立って上昇気流が始まると

触りたいが触られたいになり

触られた瞬間にぼろぼろに崩れ去り

胸騒ぎが何千メートルの高度にまで舞い上がり

そしてその後黒い雨になって降り注いだ

 

へっぴり腰め───

「廣島や玉子喰ふとき口ひらく」西東三鬼

■17,3,30日経

「ここにゐて欲しかった」───。

『核禁止条約』核兵器禁止条約交渉をボイコットした日本政府代表の席に置かれた大きな折り鶴

=28日、ニューヨークの国連本部、松尾一郎撮影

 

倉石智證