かたちあるものも

ないものも

辿りなほす

夜の海鼠なまこが好きだ

夜の闇の中にいまごろおっとりひそむ

声を出せばいいのに

いまさらと云ふから

顔さへも見えず

やはらかくやはらかく蹲って

のっぺりとなった

 

気が付けば頭の後ろの首の付け根辺りに

おおきく口を開ける

差別はイヤダ

とか、帰りたいとか

無心に云ふが

心ここにあらず

抱きしめて、あんたのことをほんとに知りたいと

心底云ふと

輪を描く腕のもぬけの

いつの間にかぼくの後ろにゐる

 

頭がお尻になったって

お尻が頭になったって

そんなことはいいぢゃあないか

面喰らふ

ぼくの肛門がものを喰ふ

明らかに不満顔でなにか喋ろうとする

すると黙りこくっていた頭が

首を振り振り

消化不良のものを吐き出した

 

海は自由だよ

後ろ前だってかまわない

それなのに落とさなくたっていい涙を

帆かけて

少しの後悔だね

風には形と云ふものが無いから

かたちあるものも

ないものも辿りなほす

 

いつも傍に置いておきたいと思ふ

小鳥たちが鳴き続けてゐる

まさか海の中にまでは聞こえないだらうと

後ろ前に

面喰らふ

おまへを凝っと見てゐると

いい大人になっても

途方に暮れる

心細いと思ふ

 

倉石智證