林檎の詩を聞きに行こうか
林檎の詩を
空に五線譜を並べて
赤い林檎は今でも真実で
青い林檎は不実の風に飛ばされる
食べられることもない林檎はただ黙って
容赦もない陽の光に耐えてゐる
林檎の詩を少しずつ
少年や少女たちが集まって来て
あんなにも大きな口を開けて北風に向かって歌い出す
リトアニアには徴兵が始まって
サンティアゴ・デ・コンポステーラの長い巡礼の旅
空気は生乾きで
いつの間にか林檎は砂まじりだ
ついに和弘さんの胃袋は全摘出になったのだった
あんな大声を出して歌ってゐたのはどうしちゃったのだらう
果たして林檎ってどんな味だったかしら
この腐った林檎を取り除こうかどうかと考えてゐる人たちがゐる
大人たちはともかく子供たちの声がまた北風に聞こえ始める
真赤な頬の少年や少女たちが
みんな背伸びして歌を唄って
ぼくたちわたしたちはみんな仲良くしようねと
林檎可愛いや可愛いや林檎って
そんな林檎があれば希望は失われないと思ふ
倉石智證