青春やあのスロープのゲレンデに置き忘れしもの今取りにゆく

/雪溶けて屋根に音するしずりかな

/南からFBのミモザかな

/小渕沢富士に雪見るフリーウェイ

/滝つぼに年の精など来ておりぬ

/雪落ちて音驚かす屋根の雪

/きしきしと雪踏む音の音つれてデーサービスに義父送り出す

/褥瘡を忘れてじじのうつつかなかなつぼまなこ(金壺眼)ばばもうつつの

/振り出しに戻りしけふの明日かな歩くを忘れトイレも忘れ

(出ない10日目)

/老人の二人芝居や床の間で問いかけしもの聞こえぬままに

/方程式少しづつずれば様に雪の夕暮れ蒼く冷え来る

/係累に子々孫々の君が代蘭雪を被りて少し傾く

/国境はかくも冷え来て空高し君の帰りを待つも不来方こずかた

/きみがれっきとした鳥であることも忘れ南天の実の赤し


倉石智證

不来方=二度と来ない方向、と云ふ意味もあるらしい。