天鵞絨びろーどの衣をたてたる冬芽かな

/深々と陽を天鵞絨の冬芽かな

/通りては冬芽を云ひし柴木蓮

/吊るし柿霜にうたれて教へけり

/一部屋にみな固まりし寒さかな

/はうはうの体で師走に駆け付けり(ジュバ)

/魴鮄ほうぼうの髭にまつわる寒さかな

/鮟鱇の唇寒し肝はよし

/前頭葉仕舞ひ忘れし寒さかな

/回収車は冬晴にかこつけて来る

/大和芋籾床に箱届けられ

/見目よりも旨さが身上とろろ芋

/菠薐草ほうれんそう雀寄り来る青さかな

/味噌汁に大根の葉の青さかな

/倖せが寝てゐるよ陽だまりの中で

/着ぶくれてマトリョーシカの笑ふかな

/めまといの追い立てられて畑の上蚊柱のごと薄き流れに

/関西弁の嫌いになりし友がゐてカジノ法案拙速の謂い

/ポピュリズム何が悪いの橋下氏大衆迎合それ民主主義

/欧州も怪しき景色生臭いそこ退けそこ退け主権が通る

/斑ボケ飯喰ひしこともう忘れ食堂にゐるじいさんあはれ

/脱水機何度云っても警告音回る回らぬまた初めから

/寝所からお風呂場までの遠さかな夜更けて粗相ばばの蹌踉

/Ohioが何か懐かしおはやうと聞こえしことも何かお早う

/有線のまた尋ね人rain rain 師走の雨に不安が募る

/ユキふるふるレイテの沖の深海に武蔵のみ魂雪の蛍の

/さやうなら留萌は雪に鉄路かな


倉石智證

1944,10/24レイテ沖海戦

TVで生存者は───

「何千と云ふ人の声の中を海へと落ちてゆきました・・・」

深海で武蔵は声なく横たわり、無残に残骸を曝し、

海の塵が積もり、その上にまだまだプランクトンが人の魂の雪の蛍のやうに、

降り注いでいるのでありました。