僕のことを女の子だと見たりするきみは

きみの中に絶えず女の子がゐてそれを気にかけてゐる

意味が取りにくいときはこすったり、擽ったりするのは

得意だ

でも、きみが男の子でも女の子であっても

近頃はあまりかまわない

水の中で起こったことは

丘の上ではあんまり痕跡を残さないからだ


ミラーが回る薄暗いバーはその点まるで水族館みたいで

どうも僕たちが出会ったり

または棲んだりするのに相応しい

カウンターの下はまるで遊具だらけだね

笑いすぎたりなんかするとそれが涙になる

歌いすぎたりなんかすると

たちまち、遠ざかる

それがいやだから僕は

自分のお母さんは誰だか知っているけれど云わないよ

ぼくがさうして子供になる

女の子になったっていいぢゃないねぇ


仲良しになる事は

いっぱい吸い込まれてしまふことだ

透明な水の中でゆらゆらしてぼくたちは一つになって入れ替わる

あんまり気持ちがよかったからおおいに伸びをする

きみは最後までおおらかでしっかりしてゐるね

でもどうして抱いてやらなかったのだらう

と云われたとき

もうぼくたちはドアを開けて街に出ていて

陸の上であるからに

印しのやうにちょっとだけしか跡に水は残らなかった


倉石智證