一つは時の岸辺にぽっと生まれ
そしてもう一つは、時の岸辺に向かおうとしてゐる
それはいかにも近しくて親しげにも感じる
「生まれたよ」、って
連絡があった
おんなのこはまだどんな風なんだらう
すぐに朝の光がリビングに満ちて来る
細い枯れ木のやうな脚にも血が射して来る
どんなふうにしてでも歩いてもらわなければならない
立て続けに緩下剤を使うのを躊躇わせる
襁褓を当ててゐるんだ
大丈夫なんだ
───あんたには云はれたくない
何しろまだ私の躰だ
木偶に不自由になっても
生まれた時は手を引いてもらって
さあ、今度はおまへたちが手を引いてくれるというのかね
訝しみ眩しむ
時おり時の岸辺は光があふれ
歩行器の先
朝の光がリビングに満ちて来る
生まれたよって、あっちでは
なにしろかわいい女の子だ
わたしだってそのことは知ってゐるつもりだ
わたくしはどこへ向かってゐる
倉石智證