あんなさみしい村で今は廃品回収車しか通らないけれど
みんなよく暮らしてゆけんな
紫色の帯なんか締めて何食わぬ顔して
少女が運転席に座ってゐる
今ではなんだか恥ずかしい倫理学を燃えないゴミで出そうとしたが
ひっそりと断られた
廃品の日が月曜だか火曜日だったか忘れたが
そんな廃品回収車が村の中を通ってゆく
昼食を済ませてちょうどお昼寝の時間なのに
村の人たちもよっぽどよく我慢してゐるなぁ
白っぽい時間が止まったやうな昼に
つい我慢できなくなって
思い切ってぼくなんかどうだらうと云いかけてみたら
少女は笑った
倫理学は人気がない
もっと硬いものがいいんぢゃないか
夜があるならば昼間の尻拭いそれで私どもは疲れる
昼に出せなかったら
夜の間に出しておいてください
ご家庭内の要らなくなった不要のものを
そんなことを云ったってやっぱりぼく自身を出せるわけがない
廃品回収車は昼の日中に村中を通ってゆく
例の心細げなでも落ち着いた声で
もうまるで、豆腐屋の喇叭ぢゃあないんだから
と云おうとしたら
少女はまた笑った
倉石智證