あゝ、おまへは何をして来たのだと秋風が問ふ・・・・・
 
■16,8/30朝日新聞

みんなこん中にゐたんだ。
「一一ライン」からはじめ、
1990年代はみんな小沢一郎なる存在によって為らされた時代だったとも云へる。
前半は「行財政改革」に費やされ、その間、政党間の争いは目まぐるしく、
だがことは次第に"反小沢"と云うことで固まって来る。
しかし、せいぜい生まれたのが私に云わせれば
「小選挙区比例代表制」と「政党助成金制度」程度のことであった。
自社さきがけ連立政権が生まれ、村山さんは自衛隊を合憲とする。
「村山談話」を残されて平和主義社会党の真骨頂を顕したが、
なにしろご高齢、ナポリ・サミットで体調を崩し、
阪神淡路震災では初動の遅さを指摘された。
橋本内閣は「消費税」と「金融ビックバン」と「省庁再編」に手を付けた。
だが増税ショックに、アジア通貨ショックが追い打ちをかけ、
敢え無く沈没。
小渕さんになってようやく「金融国会」が始まり、公的資金の介入が審議され、
日本経済の事の本質はつまるところ"マネー現象"であることが理解され始めたのだ。
信用創造システムが毀損され、どんなに財政出動してもざるに水のやうに、
乗数効果が零れてゆく。
1997をピークにして国内の賃金が減り始め、デフレが本格化して行く。
「自自連立」の頃、小渕首相は自らを「世界一の借金王」と揶揄するほどに、
時の大蔵大臣は宮沢さんで、彼は身内に"遅れて来たケイジアン"とまで言われる始末、
日本国の借金は根雪のやうに積み重なってゐた。
1998と1999にやっと公的資金が注入される。
同時に銀行再編も本格化して行った。

「自自公」が連立され、さあこれからと云ふ矢先、
"気遣い"の小渕さんは脳梗塞に倒れ、まるで「密室」で、
「あんたがやればいいじゃない」と森喜朗氏がバトンタッチすることになる。
ITのことを「イット」と云って世間を賑やかしてくれたが、
ほんとうにITショックが日本にも襲い掛かり、
2001,4/26退陣。

喫緊とは何か。
優先順位とは何だったのか。
あゝ、おまへは何をして来たのだと秋風が問ふ。
「総量規制」もあってバブルが弾け、
家計も、企業も、就中金融機関がバランスシートを毀損した。
金融と、経済が急激に収縮して行く。
企業においてもさうだが、借金では会社は倒産しない。
最終的には流動性がストップすると経済は窒息状態に陥る。
金融機関には不良債権が積み重なり、貸し渋りどころか、貸し剥がしが当然になる。
シュリンクした企業はリストラや賃金カットに走り、
家計は自らを切り詰めて、物価はますます下がるやうになり、デフレが深刻化した。
政策金利は危機に於いては一気に下げて行くこと、
円安を誘導すること、
流動性の補完、公的資金の注入などである。
「総量規制」など以ての外で、危機においては真逆のことでもあったのだ。

カジノ資本主義や、政界のマネー腐敗もあって、
国民感情は「山は動いた」に傾いた。
今にして思へば、究極のポピュリズム───。
しかし、冷戦の終結が次に何をもたらすのかは国民も政財界も深くは理解してなかった。
東にゐたプレーヤーがグローバルプレーヤーになってマーケットに打って出て来る。
冷戦の負荷から解き放たれた米国の多国籍企業などは一気にアジアや中国に打って出た。
それと軍需産業に固まってゐたインフォメーション・テクノロジーが
つまりIT技術が民間へと流れ出たのである。
「It's the economy,stupid」クリントンの米国の一人勝ちが始まって行く。
日本はバブルの後遺症に防戦一途、
ドイツは東西合併で大変な負担やむなく、
英国はポンドショックからまだ覚めやらず、
1992EU自体は「マーストリヒト条約」が未だ結ばれたばかりである。
韓国、台湾、シンガポール、香港などはまだ資本、技能ともに未成熟で、
世界の有力なマーケットでこの時ほど「先行投資」の優位性が
確かだった時代は無かったのである。
1990年代を通じて原油が1バレル=20㌦前後だったのも米国に利した。
1995から米国は「強いドル」政策に回帰する。
交易条件が改善し、そればかりか、強いドルを目指して世界のマネーが集中、
さらに基軸通貨としてのドルは"ターンテーブル"して、貪欲に世界の利回りを目指した。
2000にはクリントン政権はレーガン、ブッシュ・パパの時代の双子の赤字を克服、
経常黒字、財政黒字ともにもたらした。

今にも云へることだが、「内向きの」「その国固有のことに」
あんまりにも真剣に関わってゐても仕方がない。
1990年代は小沢一郎なるものにそして当然反小沢と云うことにもなるが、
そのエネルギーにあらゆる政治エネルギーも、国民のエネルギーも、
結果としてバキュームされてしまった。
失われた20年はそこから始まったのだ。
今はまた、タイミングが悪い。
憲法も立憲主義も、憲法9条も大切だが、
さう云ふことばかりの政治審議にエネルギーを費やしているうちに、
世界は一歩も二歩も前へと行ってしまうものだと知るべきではないだらうか。
優先順位は何かと、いつも新たにしなければならない。
顧客はいつも外にゐるものだ。