立ち上がろうとして「ポピペ」
電気が一杯になったよと携帯が教えてくれる
秋はメレンゲな雲
とても気まぐれな
蒼い海から持って来た貝殻を原稿用紙の上に置く
升目マス目に脚が出る眼が出る
もぞもぞ…ヤドカリくんか
ゴメンネ
カタツムリの場合はその渦巻きの中に
星屑が漂い
夜が一杯に詰まってゐると云ふことだ

みんなさうなんだね
自分の中には見知らぬものを一杯に詰めて
駅で別れる時みんなの笑顔は急に遠ざかって行った


1976米谷清和「新宿5番線ホーム」

 

なんとか乗り継いでそれで帰って来てぼくは
しょうむなゐまた机の前に座ってゐる
取り出してみると携帯にも何だか知らないものがいっぱい詰まってゐて
星屑かな
蒼い海かな
でも画面表示はグレイのまま空虚だ
まるでその中身までは知らない
ヤドカリくん
机の上にほおっておいてももぞもぞと歩き出すわけもないか・・・

 

倉石智證