■久里洋二「汗くさいYシャツから花の香り」

 

むかし、若者がおったとさ

若者は若い娘に恋をしておったとさ

若者は戦争に行ったとさ

娘は若者の無事を必死に祈ったとさ

ある日白い箱にカラン、コロンと帰って来たのさ

 

首がなかった

顔も眼も口も耳もなかった

伝えたかったことがたくさんあったのに

あの学生服の貧しい開襟シャツに還って

若者はたくさんの言葉を娘さんに話してあげた

すると若者の開襟シャツの襟もとからお花が咲き始め

お話はたくさんな綺麗な花になったとさ

 

小首をかしげる様子は娘さんにまるでそっくりになる

娘さんは半狂乱になっていま来た道を必死に駆け戻って行った

遠い異国の地に

胴から離れた若者の首を探しに行ったのだ

 

倉石智證

 

けふは、「長崎の日」───。