ほんたうの主題は二郎さんの性器だった
燕は二郎さんの桃色の性器を咥えると飛んでいった
雲がわくわくする
燕がパッと落としたところに
艶然と待ち構える伯爵夫人がゐる
釈然としないなぁ
(世の中が太平洋戦争に突入して行く頃のお話だった)
なにしろみんなすぐにもその内にも死んで行っちまうに違いないのに
なんだかやる気満々だ
伯爵夫人はすっぽんぽんで
しかし、寛容と云ふことについて話し始める
しかし、二郎さんの性器は恥ずかしげもなくピンクに反り返り
おいちにおいちにと
ずんずん伯爵夫人に迫って行った
すんでに股座またぐらのすぐそばまで行ったのだった
それに気付かないわけではない
演説を世界に対して続けるべきかどうか
二郎さんはとほくのあんなところにゐる
それはすぐにでも逃げようとするためでもあり
しかし、二郎さんのピンクの性器は
今さら乍ら蝋のやうに白濁した伯爵夫人の
欲望に滾たぎった肌を忘れられないのだった
倉石智證