揚羽がおおいそぎで庭をよぎって行く時

きっと誰かに叱られたんだ

飛翔の間にまに青臭い匂いが立ち込める

おじゃましますって、わたし、あんたのことなんか知らんよ

それをそんなに引っ付かないで

あんたの影がわたしに被さる


とほい昔のあなたの家で

ひとりぽっちの土蔵があって

しくしく泣くのはあなたです

しくしく泣けば幼い皮膚に

蝶が止まって翳になる

揚羽はそこで翅を休める

蝶々の午睡は僕らの秘密

覆いかぶさって皮膚の奥深くに

もう取り返しがつかないわ

井戸の向かうからかあさんがすごい形相で現れて

許しませんからねって

きっぱりと


飛翔の間にまに青臭い匂いが立ち込める

おじゃましますって、

わたし、あんたのことなんか知らんよ

いいえ、あなたぢゃあなくてわたしです

井戸の水面に雲が映り

わたしは母さんに立ち向かう


倉石智證